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海外のプロフェッショナルオーガナイザーによる講演もあるJALOカンファレンス
日本ライフオーガナイザー協会(JALO)のカンファレンスでは、海外のプロフェッショナルオーガナイザーによる講演もあります。
協会が提携するアメリカのICDで活躍されている方の講演を同時通訳で聴講することができる、大変貴重な機会です。
JALO専科講座のCLOプログラムにてICDのプログラムを学んでいます
今年(2023年)はオランダのHilde Verdijk(ヒルデ・ヴェルダイク)さんの
「治す・救う」ではなく低減という選択肢
オランダのベテランオーガナイザーから学ぶ
ハームリダクションをホーディング(溜め込み)に適用する方法とは
というものでした。
今回は学びたてホヤホヤのハームリダクションと、犬猫との暮らしにも適用できる考えについてお伝えします。
一掃だけが片づけではない
ハームリダクション(Harm reduction)とは薬物依存などの対策のひとつである考え方です。
たとえば薬物使用を止めるのではなく、安全に使用するサポートや相談しやすい窓口を設置するといったことが実際に行われているようです。
これをすれば治るといった解決法の提案や、本人だけにやってもらうものではないのが特徴。
https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/675/
薬物をやめさせるのではなく、リスクや健康への被害を減らすことを優先し、本人と一緒になって、様々な困りごとに向き合っていこうという取り組みです。
それによって危害(Harm)を低減する(reduction)ことを目指します。
慢性的に片づけられない原因のひとつに、価値の有無にかかわらずモノをためこんでしまう状態(ホーディング)というものがあります。
モノを手放すのに「手放しづらいなあ」と感じることは多々ありますが、この傾向がある方たちはそれが非常に強いため、ためこんだモノが自身の生活や社会生活を圧迫することもあります。
そのような方に片づけと称してモノを一掃しても、余計に状況が悪化することも。
そうではなく、危害を減らし安全性と健康、快適性を確保するために達成可能な目標を設定し、クライアントとオーガナイザー、そして他の専門職で作る対等なチームで包括的にアプローチしていくというのが、ホーディングに適応されるハームリダクションの考え方です。
この方法ではクライアントの精神に負担をかけることなく、おだやかなペースで変化を促すことができるのです。
見渡せば日常にもハームリダクション
ハームリダクションってなんか難しそう、うちには関係ないかな、と思われる方もいるかもしれませんね。
しかしこれはわたしたちの日常生活にも関わりある考え方だと思います。
たとえば、ペットを飼っている家庭で喫煙者がいる場合を考えてみます。
タバコは誤食すると神経症状などニコチン中毒を引き起こすことが知られています。
また、タバコの煙は重篤な呼吸器疾患の原因となることも。
側でいっしょに暮らす人だけでなく、犬猫にとっても健康上の危害が及ぶ可能性があります。
だからといって「タバコをやめて!」と声高に叫んでもうまくいかないのは想像できますよね。
そこでハームリダクションの視点から対策を考えてみます。
- 飼っている犬猫が主に過ごす部屋とは別に喫煙できる場所を作る
- タバコ自体もペットから届かない場所に収納する
- 犬猫が万が一誤食してしまったときの対応について調べて共有しておく(なるべく早めに動物病院を受診するのがベター)
ほかにもさまざまな対策が考えられますが、あくまでも家庭ごとに実現可能な策を設定するのがコツ。
ほかにも、減量が必要なペットにおやつを与えすぎてしまう飼い主さんに、獣医師が減量用の処方トリーツを提案するのもハームリダクションですね。
喫煙やおやつをあげること自体をとがめることなく実害を減らせるので、気持ちに負担をかけずにすむことができます。
犬猫の安全を守るという片づけ動機が可能性をひろげる
このように身近なところでもハームリダクションの考え方を適応した片づけのゴールを設定すれば、家族の関係性を良好に保つことができます。
また、ホーディングに適応される手法であることから、近年よく耳にする犬猫の多頭飼育へのアプローチのひとつとしても有効なのではと考えています。
わたしもまだまだ学びの途中ですが、獣医師とライフオーガナイザーとしてこうして学んだ知識をもって動物福祉に関わっていきたいと思ったカンファレンスでした。